恐怖を煽る売り方をした人の末路

こんにちは。

コピーライターの山崎です。

「もし旦那様が病気で倒れて働けなくなったらどうするんですか?」

こんな言葉を奥さんに投げかける保険の営業マンもいます。

これを見て、あなたはどう思われます?

ちなみに私は

「困らせるようなことを言う営業だなぁ」

と感じます。

「旦那様が倒れたらどうするんですか?」

この言葉からは将来の暗雲が明確に想像できます。

  • 家計を支える旦那が働けなくなる。
  • 奥さんがアルバイトに出ざるを得なくなる。
  • でも収入は少なく、家計は火の車に。
  • そこから重なるようにあれもこれも……と。

そんな未来が容易く想像できてしまいますよね。

こんな未来は嫌ですね。誰も迎えたがる人などいません。

イメージするとこんな感じでしょうか?

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奥様、旦那様が倒れてしまったらどうするんです?

奥様が朝から晩まで働いて、子供の面倒も見ながら、家計を支えるんですか?

奥様は働くのと同時に、病院に入院している旦那様を見るために通院もしなければならない。

治療費と生活費と、ダブルでのしかかってきますよ。

嫌ですよね? そんな状態。

そこで、旦那様にもしものことがあっても!

私どもの保険があれば大丈夫!

奥様、ご安心ください!

入院一日につき〇〇円が降りて、すぐに受け取れて……。

あれこれなにこれないこれないこれ(考える暇を無くす目的でまくしたてるように説明中)……。

わかりました。奥様、ご決断されるんですね。ありがとうございます!

奥様の決断は間違っていません。これで家族は幸せになれるんですから。

なんていう状況がありそうじゃないですか?

恐ろしい未来を提示して決断させようとする方法です。

ですが、これで売れてしまうこともあるので一概に馬鹿にはできません。

ちなみに、口で言う言葉だけではなく、文章にしても「恐怖で売る」というのは一定の効果があります。

恐怖で煽る売り方をすると一時的には売上が上がることが期待できます

ここで注意していただきたいのは、「一時的に」です。

効果的に恐怖を訴えることができたら、それに踊らされた人は買ってくれます。

例えば歯ブラシを売りたいとするじゃないですか。

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「極細毛で汚れをごっそり取る!」

なんていうありきたりな言葉を作っても、何だかいまいち売れ行きが悪い。
ということがありますよね。

そこでこういう風にしてみます。

「あなたの寝ている間に口の中の細菌はこんな風に増えていきます」

というようなCG(コンピュータグラフィックス)を作って、文章に添えます。

CGの中で、1つの細菌が「パーンッ!」と破裂した直後、画面中を覆い尽くして800万匹に分裂し、歯茎の神経という神経に侵入して根こそぎ食い破ってゆくという恐ろしいCGです。

次にその細菌の群れを、売りたい歯ブラシが全部こそぎ落としてゆくわけです。

「歯茎から細菌を根こそぎ落とす。〇〇歯ブラシ」という文章とともにね。

これによって

「あなたの口の中ではこんな恐ろしいことが毎日起きているんだよ? でもこの歯ブラシを使えば細菌は全滅してぜんぶ解決だからね!」

ということが示されるわけですね。

おそらくこの売り方したら、ありきたりな「極細毛で汚れをごっそり取る!」というつまらない文章だけよりもかなり売れる率は高いと思うんですよ。

例で話を出しているだけなので実際に数字は出していませんが。

確かに売れるやり方ではあります。

恐怖を煽って売る方法は、ただ怖がらせるだけじゃなくて、それに対する解決策を持ってくるというのが常套です。

±0のところから一旦落として引き上げる、というイメージ。

もう一つわかりやすい例

こんなものはどうでしょう?

「あなたの家には悪霊がとりついています」

「嫌ですね」

「でもこの幸運の壺を玄関に置いておくだけで、聖なる気が家の中に満たされ、悪霊を追い出し、二度と近づけさせません。あなたの家は守られるのです」

「本当ですか?」

「はい。今ならもう一個おまけにプレゼント。数珠もつけちゃいます」

「ありがとう! 買います!」

置いておくだけでいいのに数珠いるんでしょうか?

でも恐怖で売っているとこんな弊害が

1,信用をなくす

上のような壺を売ってくる人が来て、「家の中に悪霊がいる」と言われて本気で信じてしまったら買いたくなってしまうかもしれません。

ただ、これってコントロールされているのと同じなんですね。

悪く言えば操られている状態。

だから、そのコントロールされている状態が消えたとき、反動がやってきます。

「あいつは信用できない」

となります。

下手をすれば怨みを買うかも。

商品を売るということは、お客様を幸せに導く行為とも言えます。

恐怖で売った場合でも、結果的に幸せには導く形になるのですが、その過程が良くないです。

結果的に良いものであっても、売り方がまずかったために不要な恨みを買うこともあります。

さらにまずいのは、悪評は広まる可能性もあるということです。

今はSNSなどが発達しているのですぐ広まります。

最初から、買うと幸せになる壺として売った方が良いのかもしれません。

それだと買わないですかね……?

幸せになる壺だったら、それとは別の話で、根拠が欲しいところですね。

2,もう一度買ってくれることがなくなる

信用を失う、から派生する話です。

信用を失うと、もうその人のところには行かなくなりますよね。

結果的に、長くお客様になってくれたかもしれない方を逃してしまうことに繋がります。

そして、一度信用を失うと取り戻すことは困難なので、もう二度と購入してくれないということもあり得ます。

長くお客様になってもらいたいならデメリットが目立ってきます。

3,必死な人に見られる

恐怖で売ろうとしているのを見抜かれると、こうなります。

「これが売れないとまずい、後が無い」とばかりに、必死になって売ろうとしてくる人を見ると、逆に引いてしまいませんか?

必死な人を見ると、冷ややかな目で見る人が多くなります。

自分の態度が、逆に人を遠ざけてしまうことに繋がります。

これらのことから言えるのは……

恐怖という感情はタイトルにもある通り「劇薬」なんですね。

使えば一時的に成果が上がる可能性は高い。
けれど、それは短期的であり、同時にリスクも生んでしまう。

商売において短期的に物事を見ていると、必ずどこかで歪みが起きて良くないことにつながります。

結論を言うと、恐怖で売ることはマイナスの力が大きく働くことが多いのだと言えます。できれば控えた方が良い、と言えますね。

ただ、短期的に売上をドカッと上げたい、という特別な目的があるなら使うのも一つの手でしょう。

ただ、その場合はきちんとリスクも考慮した上でなければ危険な薬になりますので、ご注意を。

恨みを買わないようにする、恐怖を使った実践的な売り方は?

ここまで書いておいてなんですが、実際に恐怖訴求で売っている商品というのは考えてみるとけっこう多く存在します。

ただ、徹底的に恐怖を煽ってはいません。オブラートに包んだような売り方です。

苦い薬を糖衣で包んで飲ませる薬のようなやり方、これは私たちコピーライターの間では「シュガーコーティング(砂糖に包む)」などと呼んでいます。

このやり方は多く一般企業に浸透しているので、シュガーコーティングされた売り方は一見、恐怖訴求だと気付きにくい場合もあります。

シュガーコーティングの売り方は応用すると、「恨みを買わずに堂々と恐怖訴求で売ることができます」。

さりげなく「こんな大変な状況になるよ。それを解決できるのがこの商品だよ」というような売り方です。

TVなどのメディアを見ているとシュガーコーティングをして売っている商品が沢山あるので、商品名は出しませんが、いくつか用例を紹介します。

「布団を天日干ししたときに香ってくる匂いは、お日様の香りではなくダニの死骸。この温風ふとんクリーナーなら、無数のダニを根こそぎ死滅させるだけでなく、アレルギーからもあなたを守ってくれます」

「汗をかいた足で歩き回ると、家の中は雑菌だらけ。このスプレーを寝る前に吹きかけておくだけで家中除菌できます」

「乾いた氷は滑らない。でも濡れた氷はよく滑る。だから、濡れた氷の上でも路面をきちんと捉えるこのタイヤにして、交通事故と無縁になりましょう」

他にも沢山あります。

シュガーコーティング。

この売り方を応用できれば、どストレートな怖さで売ってお客様に逃げられることなく、逆にお客様を安心させることもできます。

なので、恐怖の売り方が絶対にいけないという話ではありませんでした。

むしろ、分野によっては恐怖を最大限に利用した方が売りやすいものもあるので、ただ恐怖を煽るだけでなく工夫してみると、思わぬ結果が出るかもしれませんね。

結果的にお客様を幸せにすることもできるでしょう。

今日もご覧いただきまして、ありがとうございました。

山崎

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